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それは、ある日の昼休みの事だった
その日、私――ロックな子は、いつも通り仕事の昼休みに入り、昼食をとっていた。
玉子焼きに箸をのばしながらふと、窓の外に視線をやったその時、不意にそんな考えが浮かんだ。
DLチャンネルのみんなでトークでリレー小説をやったら面白いんじゃないか?
タイトルは、『アテナちゃん VS にじよめちゃん』なんてどうだろうか?
そして、果てしないトークが立てられた
※画像は、アテナちゃんの画像探したけれど無かったのでにじよめちゃんの画像になりました
出典:www.bing.com
「メカニックパーツ、ON」
にじよめちゃんの体を装甲が覆う
「これが、にじよめちゃん、モードM2DWだーーー」
空中でM2DWウェポンのブースターを吹かせ、敵に突撃するにじよめちゃん
その光景を下から見ていたアテナちゃんは叫んだ
「やめてっ、にじよめちゃん
そんな事をしたら、にじよめちゃんがにじよめちゃんじゃなくなってしまうわ」
出典:www.bing.com
スタッフロールが流れ、ブザー音と共に映画館が明るくなっていく。
観客はまばらで、各々が雑談しながら会場を去っていくなか1人の少女――アテナだけは興奮冷めやらぬ様子だった。
「面白かったなあ『逆襲のにじよめちゃん』! 背中の機械がズババッってなってたし、決めセリフの『誠意は伊達じゃない!』も凄かったし、なんかもう凄かった!」
圧倒的な語彙不足で凄かったを連呼するアテナ。
そんな風にキャッキャと騒でいると、気づいたら会場にいるのはアテナ1人だけになっていた。
出典:www.bing.com
「そんなによかったか。」
私――にじよめちゃんが電話越しにそう聞くと、奴はまた同じ話をしだした。
「全く、そんな金があるなら課金の一つもした方がマシだろうに。」
そう言うとアテナは、
「にじよめちゃんも見に行こうよぉ~、あのねぇ?背中の機械がねぇ?」と三度目同じ話を始めた。
ここで話の腰を折らない辺り、私も丸くなったのだろうか。
キネマ旬報のページを繰りながらニヤけている自分を鏡越しに見ながら、そんなことを思った。
――ブツッ!
……ん? やれやれ、随分話し込んだせいで、電池が切れてしまったではないか。
仕方ない、充電してまたかけ直してやるか……む? 私の方はまだ残っているな。
とするとアテナの――いや、待て。
確か奴は、自前のアンテナで直接通話していたはず。
電池が切れるなどあるはずがない、
それにアテナは、ポップコーンにホットドックにアイスまで食べたと話していた。
空腹で電波が弱まったはずもない、まさか奴の身に何かあったのでは?
私はアテナのいた映画館の場所を思い出して、出かける準備を整えた。
ここからだと一時間弱。その間に奴からかけ直してくれるのを祈りながら。
ーーターゲットは確保できたか?
あぁ、先程同胞から連絡があった。
そちらへは1時間ほどかかるそうだ。
後は、わかってるな?
・・・よし、では秋葉原駅から離れろ。
ブツッ、と言う音が耳元で鳴る。
俺は持っていた携帯を鞄にしまい、中指を立てた。
決してクソ漫画のオマージュというわけではない。
あえて言うなら、そうだな・・・。
この秋葉原へ向けた宣戦布告、とでも言っておこうか。
「ふぅー!ふぅー!(私にひどいことするつもりでしょう!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!)」
アテナちゃんは突然現れた黒服の男に口を塞がれ、腕を掴まれて強引にそばに止まっていたリムジンに連れ込まれた。防音はしっかりしており外部に助けを呼ぶこともできないだろう。
「楽しんでもらえたかな。私の自信作『逆襲のにじよめちゃん』は」
「(あ、あなたは!?)」
奥の扉からブランデーを片手に現れたのは、アテナちゃんもよくニュースで見る顔であり映画界の権威、ディー監督だった。
(なるほど……ディー監督。奴がアテナを攫った黒幕か)
映画館へ向かっていた私は、足を止めて向かう先を変更した。
相手は車、こちらは徒歩、まずは移動手段を調達せねばなるまい。
情報は不足している。だが、問題はない。もう奴は私の視界に入っている。
(迂闊だったな。不用意に私の名前を口にするなど……。
ディー監督――お前はもう私が捕捉した。逃げられると思うなよ)
「ふむ、あのバイクでも借りるか」
私は見つけたバイクの持ち主に交渉して、バイクを借りた。ついでに少しばかり誠意も頂いておいた。
だが……。上手く行きすぎてはいないだろうか?
アテナを狙うほどの者が、よもや私の捕捉能力を知らぬというのだろうか。
いや、きっと気のせいだだろう。奴はただ、私に興味がないだけ……そんな奴ならいくらでもいる。
私はバイクに跨り、じっとリムジンの行き先を確認することにした。
用意周到な誘拐犯だ、素直に行き先へ向かうことはないだろう。さて、終着点は……。
鶯谷・・・?
どういうことだ?
ディー監督は世界中に名を馳せる名監督であると同時に重度のロリコン、しかも二次元にしか興味がないオタクであることで有名。
それにディー監督ほどの人間がラブホ街に出入りしていたらパパラッチが黙っていないだろう。
何か考えがあって行動しているのは確かだが行動が不可解だ。
何故わざわざ目立つような行動をする・・・?
追っていたリムジンは特にスピードを出すわけでもなく、夜の街を駆け抜ける。
その平常さがある種の異常さであり、それが私にらしくない身震いをさせた。
「突然このような招き方をして申し訳ない。しかし、どうしてもあなたと話す必要があったのだ」
ディー監督はアテナの拘束を解きつつ話し始めた。
「・・どういう事?(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾シャッ!シャッ!」
「警戒されるのも当然だが、危害を加える気はない。むしろ、協力して欲しい」
「協力?」
「そうだ。世界を滅亡から救うために、君の失われた記憶を取り戻す手伝いをさせて欲しい。君の記憶に世界を救う鍵があるのだ」
(きっと今頃、ディー監督に偽情報を吹き込まれているだろうな)
にじよめちゃんは状況把握に努めていた。
(アテナがそれを信じるかどうか、であれば問題ない。あれでもDLチャンネルで連日、歴戦のツワモノ達を相手にしているのだから)
リムジンが鶯谷のラブホ街の中間あたりに差し掛かる。
「これは、誘っているな・・・さて、どうしたものか・・・よし、あの手でいこう」
にじよめちゃんは携帯を取り出した。
「もしもし・・・そうだ、出番だ。普段の勤務では誰よりも優しく振舞って周囲を欺いていたお前だが、本当の力を見せてもらう時が来た。戦場育ちが伊達ではない事を証明して見せろ」
「ごめんなさい」
「……!?」
にじよめちゃんのバイクは側面からが猛スピードで突っ込んで来た大型トラックに吹き飛ばされて大爆発を起こす。とっさに跳躍したじよめちゃんは地面に転がり難を逃れた。
「今日は別の『予定』が入っておりますの」
大破炎上するバイクを背に大型トラックから右手で携帯を耳に当て、左手でロケットランチャーを肩に担いだ知的そうな女性が運転席から降りてくる。それはにじよめちゃんのよく知る顔、サイ・リリーであった。
「失われた記憶?」
「――ああ。もうそろそろ、思い出している頃ではないかね? 実はこのリムジンには、君の記憶を取り戻すための仕掛けが施してあってね。終着点に到着する頃には、全て思い出せるだろうが……」
ディー監督の言葉通りに、アテナの頭にはあることが浮かんでくる。
「……思い出した。前ににじよめちゃんに貸した、1000円まだ返してもらってないよぉ~!」
「そうだ、もっと思い出すんだ。さあ……」
「……はっ。それにあのとき……。あっ……」
次の記憶を思い出したアテナの頬が、みるみる朱に染まっていく。それきり黙ってしまったアテナに、ディー監督は動じることなくリムジンが終着点に到着するのを待っていた。まだ重要な記憶が思い出される時間ではない。そう確信しているかのような余裕の表情である。
(ディー監督め、余計な記憶を……。だが、私は確かに借りた999円を返していない。999円だ。
1000円と言ったのはアテナの勘違いか? それとも、ディー監督の仕掛けが弱いのか?
だが、二度目の沈黙、口にできぬということはきっとあのことのはず……。
アテナは無意識に、何か重要な情報を知ってしまっていたというのか?)
サイ・リリーは撃ち終わったロケットランチャーを投げ捨てて、黙って私を見つめている。
彼女の別の『予定』が何かはわからぬが、急がねばなるまい。ディー監督が重要視するのがアテナの記憶だけであれば、記憶を引き出されたアテナは……。用済み、のはずだ。
「飼い犬に手を噛まれる、と言うが、この身に起きようとはな」
「別にディー監督に付いたわけじゃありません。あの子を助けたいんです」
「それは私も同じだ。だからこうして追っている」
「でもあなたは、あの子を囮にしてもっと色々と調べるつもりでしょう」
「そうだ。このにじよめちゃんに敵対した事、骨の髄まで後悔させてやらねばならん」
「それじゃ遅いんです。あなたには邪魔させません」
「なるほど。二人の姿が見えないと思ったら、そういう事か。だが心配ない。アテナはとてもシタタカだ」
「どういう意味ですか?」
「1000円と999円、盗聴器で聞かれているのを知ったうえでこちらにシグナルを送る。たいしたものだ」
「・・・盗聴器・・・どこにそんな物・・・っていうか、それ、もしかして私達にも!?」
「フ・・知りたいか?なら、いくら出す?」
「グァッ」
高級ホテルの一室、ボディーガードとおぼしき黒服を、忍び寄りスタンガンで無力化する。
「思ったより人が少ないですね」
スタンガンを倒れた黒服にさらに押し付け、確実に意識を失わせながら、にじよめさんは呟いた。
「アテナちゃんが本命と言う事ですか。しかし拠点をほぼ無人にするのはいただけませんね」
特に罠らしきものもなく、にじよめさんは部屋を物色し始めた。
「ノートPCですか」
電源が入ったままのPCを見つけ、モニターを覗き込む。
「不用心ですね。私のような者の襲撃を想定していなかったわけでもないでしょうに。ですが容赦はしません」
あの日、戦場で立ちすくんでいた私を拾ってくれた人、にじよめちゃん。その人に頼まれたなら、私は戦場で培った技能の全てを開放して修羅になろう。
「知りたいことは知れました。にじよめちゃんに報告した後・・・そうですね、新人さんにでも事前調査に出張してもらいますか。しばらく彼には本来業務から離れて貰いましょう」
バキィ!!
「……!、にじよめちゃん!!それにサイちゃんも!!」
「誰だ!?」
要人警護仕様のライフルでも撃ち抜けないリムジンのドアが形を変えて剥ぎ取られる。
ブランデーをリムジンの床に零したディー監督と両手をあげて歓喜するアテナの前に、黒服達が臨戦態勢で立ちふさがる。
「なるほど。サイ・リリーを脅して騒ぎを起こし、その隙に公道に囮の別のリムジンを走らせて自分は隠れる。パパラッチは騙せてもにじよめちゃんの目はごまかせんぞ」
「アテナちゃん!エロ同人みたいなことされませんでしたか!?」
そこに居たのは身長215cmの巨体にじよめちゃんと、影に隠れるように寄り添うサイ・リリーだった。
「にじよめちゃん!私のメッセージに気づいてくれたんだね!」
「1000円…まさにここ居酒屋『千あるぷす』の地下駐車場が隠れ場所というわけだ。襲撃地点から歩いていける場所を選ぶとは大胆なことを」
もっとも、にじよめちゃんの補足能力で場所は割れていたのでアテナのシグナルが無くても問題なかったわけだが、アテナが嬉しそうなので黙っておくことにした。
もっと泳がせるつもりだったが細かい情報収集はにじよめさんに任せればいいだろう、あいつなら私より上手にやってくれる。
「攻守逆転だ。さあ、お前の誠意を数えろ!」
「フッ・・・思ったよりも被害は甚大だったが予定通りだ。これで邪魔者を一掃できる」
「ディー監督、状況が見えているのか。もうお前は終わりだ」
「アテナを取り戻したくらいで勝利を確信するとは、にじよめちゃん、噂ほどではなかったな」
ディー監督は携帯を取り出し指令を発した。
「今だ、やれ」
しかし、何も変化は起きなかった。
「な、何故だ!早くしろ!」
「ひょっとして、これの事?」
駐車場の暗がりから、二人の少女が何かを手に持って現れた。
「ディル!エル!無事だったのね」
「予定とは違ったけどね。サイ、にじよめちゃんと一緒に来るなんて聞いてないわよ」
「色々あってね。でもちゃんと仕事はしてくれたようね」
「ええ。ディー監督はここで私達を一網打尽にするつもりだったようね」
エルは手にしたプラスチック爆弾を、サイに手渡しディー監督に向き直った。
「これを爆発させたら自分も死ぬのは分かってた?」
「私は死なんよ。この場所に居さえすれば無傷だ。そうなるように設置している」
「用意周到な事だ。だが、それも今となっては無意味だ」
にじよめちゃんが黒服達を蹴散らしながら迫る。
「もうあなた一人よ。降参したら?」
ディルの言葉にもディー監督は耳を貸さない。
「だから甘いというのだ。お前達を相手にするというのに、これだけしか用意しないと思うのか」
駐車場の入り口から猛スピードで乱入してくる一台のランドクルーザー。
「危ない!」
慌てて避けるにじよめちゃん達を尻目に、ディ-監督は車に飛び乗り去っていった。
「今回は負けにしておこう。さらばだ」
数日後、エイシスの一室。
「逃がしてよかったの~?」
「構わんよ。奴はもう私に逆らえない」
「それも全部にじよめさんのおかげね」
サイの言葉に、にじよめさんは微笑んで返した。
「いえ、皆さんが勝ってこそですよ」
「それで、結局あいつの目的ってなんだったの?」
「エルさん、彼の本業は映画監督です。でも新作の着想が全く浮かばない。そこでDLsiteの同人誌に目を付けた」
「え?それなら原作者に話し通せばいいだけでしょ」
「彼の売りはあくまでもオリジナルです」
「それならそれでエイシス買うとか、なんならGEOだって買えるのに」
ディルの疑問には、にじよめちゃんが答えた。
「天才とアレは紙一重、だ。考えすぎて常人の及ばない変な答えにたどり着く。あいつはその手の人種だって事だ」
「へぇ~。凄いんだねぇ~」
「これからは、私達のために働いてもらうさ。弱みも何もかも全て、こちらが握ってる」
これで全ての事件が解決した事を知り、みんなの緊張が解け、日常を取り戻した。
が・・・
「あれ、何か忘れているような・・・・・・・あ」
「にじよめさーん。これからどううればいいんですかー」
ここは地の果て流されて・・・
「生存確認を社内でも社外でもされとる…(@_@。」
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